数年前、野菜飲料のパッケージをデザインさせて頂いたことがありました。
ターゲットはシニア世代。この層はいつ、どんな目的で野菜飲料をとるのか。
様々なデータや対象者へのインタビューなどを重ねながら、
味設計とパッケージデザインを検証してゆく、かなり時間のかかる作業でした。
しかし、シニア、シルバーを対象とした商品、
成功させるのはなかなか難しいと言われてます。
シニア世代が皆さん同じ好みのわけが無い。
長い人生を経てきた人々なのだから、
蓄積してきたものはとても多いわけで、
趣味趣向も千差万別なのです。
F1、M1など年齢層でターゲットを絞るマーケティングが
当たり前だった時代がありました。それもつい最近まで。
どんな商品作りにもそれを当てはめようとしていた。
データの裏付けに安心しながら、心のどこかで
(親や親戚でそれ使う人、いるかなぁ・・)という考えもあり、
実感が伴わない開発となっていたように思います。
マーケティングは大切なんだけど、
全部が全部それに左右されては駄目だということなんです。
人間の判断と意思決定にについて、
「二重過程理論」という研究があるそうです。
人間には情報処理のシステムが2種類存在し、
システム1は直感・イメージ・個別事例などをもとに素早く、無意識的な判断。
システム2は数字や論理、統計データに基づいてリアリティを感じる、
という2つの特徴を使い分けるのだそうです。
そして人間はシステム1が優位に働くとしていますが、
昨今ではシステム2を優先してしまっているのかも知れません。
この野菜飲料はひっそりと市場から消えました。
データばかりに頼ってはいけない。
そんなことをつくずく実感した商品でした。